水際の鏡像

ライブや舞台のはなし

「グレート・ネイチャー」覚書--小山慶一郎は待たれながら

 「グレート・ネイチャー」、大千秋楽お疲れさまでした。


 私が観劇したのは9月19日18時、20日13時・18時公演の3回。少し前の感想になるが、ネタバレは大楽後の方がよいと思い、遅ればせながらも載せる。ネタバレを含むため、以下閲覧は自己責任で。感想はもう敬体も常体もごちゃまぜなんだけど、そういう読みにくさでむしろ伝わることがあるかもしれないのでそのままに。言い訳ですが。

 

 

 

 

 

 

 

 

  舞台の感想を一言で表すと、本当に最高だった。今回が初めてのジャニーズ舞台観劇で、地獄から這い出たクソサブカル根暗アングラ女でも楽しめるかしらん、と不安だったけど、もう、そんな心配いらなかった。最高だった。舞台の内容に関しては、人によって好き嫌いや、解釈が分かれる話だと思う。クソサブカル根暗アングラ女の私としてはかなり好きだった。ちなみに私は今年の7月に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を観ていたので、マッドマックスを視聴しているかどうかで楽しみかたも変わってくる舞台ではあるかもしれない。

 舞台始まる前に小山さんがKちゃんNEWSや雑誌で「コメディなんで舞台観ない人でも楽しめると思う」って言っていたけど結構ガッツリ舞台らしい内容の舞台。しかもちょっとアンチ・テアトル系。好き。

 いきなり本筋から外れた話をして申し訳ないが、生物学での考えに「環境世界」というものがある。私は中学生のときにこの考えを知って以来、気に入ってしまい自分のTwitterのプロフィールの現在地には「環境世界」と書いている。「環境世界」について、簡単に説明を引用すると次のような考え。

生物は同じ環境に生きていても、その環境に見いだす意味は、それぞれちがう。環境に見いだした意味によって構成された世界が、それぞれの「環境世界」だ。

(中略)

同じ環境でも、環境世界は、注目し、関心を抱く対象によってがらりと変わる。街を歩くとき、子ども好きには子どもの姿が目につく。思春期の若者は、魅力的な異性の姿に気を取られる。つまり私たちが見るのは、通常それぞれが求めるもの、関心をもつ対象だ。

(大井玄 『環境世界と自己の系譜』 みすず書房 2009)

 

 私はこの考えを知ったときに"Eureka!"と思ったのだが、「環境世界」とはざっくり言えば「あなたと私が見ている世界はちがう」ということだ。私は無学非才のため見当はずれな解釈かもしれないが、とりあえずそういうことだとする。「グレート・ネイチャー」は、私たちが環境世界の住人だということを感じさせられるような舞台だった。内容そのもの、というわけではなく、おそらく100人いたら100人が異なる感想を述べるのではないかという点で、である。

 「自然。想像。自由。」というキャッチコピーが付いていたが、本当にその通りであった。観客それぞれが自分の持ちうる経験や興味に基づいて楽しめるような、自由な風を感じられる舞台だった。

 私個人の感想や注目した点を時系列には(あまり)こだわらずに覚書として残しておく。劇中の台詞も記憶とメモに頼っているので、正確ではないことが多いと思われる。あと観劇済の人でないと伝わらない内容なので、その点は申し訳ない。


 いちいち場面を追って書いていると長くなるから書きたいところだけ書く。

 

感想

・鍬か何かで老人が畑を耕すようなシーンが最初。「何もないところを耕す」ことが舞台全体のテーマと関係している。

・バスの形のパネル(というかバス)が舞台に降りてくる。ロードムービーでは自分探しの象徴として車が使われたり重要な意味を持ったりするが、この舞台ではバスがその象徴なのかなと思った。

・舞台上にあるのは一本の木(というか序盤ではただの角材だが)、ベンチ、バス停。舞台上にある一本の木というのは「ゴドーを待ちながら」のようである。内容が不条理系というような点でも。ちなみにこの記事のタイトルはベケットの戯曲「ゴドーを待ちながら」をもとにした、いとうせいこうの戯曲「ゴドーは待たれながら」を意識してつけた。

・篠崎(小山慶一郎)登場。
・牛の格好をした長谷川(中山祐一郎)が牛だからゲロ吐いてまた食って反芻みたいなシーン
確かに反芻したくなる舞台(感想)。

・真田(久ヶ沢徹)の台詞で、確か篠崎が「台詞」という単語を含む台詞を言ったところで
真「台詞?じゃあこれはお芝居か何かなんですか?あちら側が上手、向こう側が下手、昼公演がマチネ、夜公演がソワレなんですか?」
というようなセリフがあって、パンフでも小山さんが「今まで経験した台詞にはこんなセリフがなくてビックリした」と言っていたんだけど、私はこういうメタ的表現が大好きなので盛り上がった。私はメタ的表現大好きオタクなので......。
この後に真田が篠崎に対して
「あなたはお芝居なら主役をやりたい人、あなたは山場を作る人」
というようなことを言ったので、私は観ていてとても納得した。
おそらくこの舞台を観に来ている人の大半は小山慶一郎さんのファンで、もちろん私もそうなんだけど、このように舞台の前半にメタ的表現でバシッと主役を小山さんに背負わせているの面白い。ジャニーズという華やかな(華やかに見える)世界から、小劇場のようなちょっとアングラで哲学的な舞台に出現した小山さんの異質さを際立たせているなあと思った。主役ということを前提にされている世界。

・バミリに対して
真「シ......ゲ......シゲアキ?志茂田景樹!」シゲアキー!志茂田景樹には流石に笑った。

・問題児マックス(谷澤恵里香)を探しにいくときに、真田と長谷川は裏山(客席)に探しに行くんだけど、篠崎が自分も探します、って言ったときに
真「篠崎先生はこっち(舞台上)で探しててください、篠崎先生が裏山に行ったら大変なことになりますよ!ほぼ人肌の枝が伸びてきて素っ裸にされますよ!」
とか言っていて笑った。私たちは人肌の枝であるし野蛮な存在であるということを忘れてはならないと思った......笑 
舞台の前半は舞台の上の「あちら側」と客席の私たちの「こちら側」を意図的に意識させていることが多いような気がした。
真田と長谷川が客席に降りるんだけど、
「今日の裏山の動物たちはずいぶんと綺麗ですね」みたいなことを言ってさっき枝扱いしたよね?って感じで面白かった。客席のお客さんに絡みにいくところで、「マックス!あっ違った」的なやりとりを3人くらいする。あとお客さんに綺麗ですねとかかわいいですねとか言っていって好感度は大事みたいな話になって、急に話を振られる篠崎
篠「大事です!(手をグッとしながら)」
一人飛ばしてかわいいですね、何で今一人飛ばしたんですかってところで急に話を振られる篠崎
篠「可愛すぎる、からじゃないですか?」ドヤ顔。

・OP。OP映像結構ノリノリで好きだからあれだけ売ってほしい。

・マックス登場
・この時点での私の心境「マックス......?んでこの衣装......マッドマックスか......?」

・マックスが手に負えないから篠崎先生何とかしてくれみたいな感じで、真田と長谷川はマジックミラーの外側から見ているから後は若い男女でやってくれみたいな台詞。
若い男女とマジックミラーってさあ......マジックミラー号じゃん!笑 
自担がマジックミラー号の中の人になるとか面白すぎる。いや私が勝手にマジックミラー号じゃんって思っただけだから全然違うのかもしれないけど!
 まあごちゃごちゃ言っているうちに暗転。
「若い男女が暗闇の中で何が起こるかわかりませんよー!」
「うるさい女の口はキスで塞ぐ、いやそれ以上でも」
みたいなことを真田と長谷川が囃し立てる。
照明ついたら篠崎がマックスを押し倒しているみたいなことに。そしてパンツ一丁の長谷川。
長「照明がついたときに見せたかったから」

・りんご取るシーンで象になりきってやるんだけど、篠崎の象のなりきりかたに関して
長「縮尺考えろ!」「演劇なめんな!」って台詞。メタだなー。
・真「あなたは粘土細工の豚ですか?」
 篠「豚?僕が豚ですか?」
 真「いや重要なのは豚ってところじゃなくて粘土細工ってところなんだけど」
みたいなところの「粘土細工の豚」って言い回しが好き。

・長谷川、真田コンビで柿の種を植えるところが、厳粛な音楽が掛かっていてミレーの『種まく人』みたいだなと思った。
マ「どっから音楽鳴ってんだよ」

・篠「......独特すぎて!なんかもう独特すぎて!」
観客の思っていることを代弁してくれる台詞だなあ笑。

 ・篠崎のダンス指導シーン(成り行きでのダンス)
これは稽古中にダンス指導がっつりやることに変更になったんだよね確か。この辺りは観客は手拍子もしつつ前半では盛り上がる楽しいシーン。ダンス指導中に4人で静止してセット回転。ここまでに、というかこのダンスシーンで盛り上がるからこの後のシーンの静に繋がるなあと。

・セット回転、10年後のシーン。
・喫茶店の客の老人の朗読から始まる。朗読の感じは大槻ケンヂとかあの辺りとかっぽい雰囲気。
朗読の内容は「人はみな裸で産まれたのにいつのまにか厚着をしていて本当の自分がわからなくなっている」みたいな内容。結構私が好きな感じの内容。
・朗読に対して拍手して有り難がる喫茶店のウエイトレスや客たち。なんかこの「よくわからないもの」に関して有り難がるってのも意味があるのかなあと勝手に解釈。
・喫茶店には眼帯のウエイトレスがいたり怪しい老人がいたりしていい感じにアングラな雰囲気。
・10年後の篠崎。黒ハット、サングラス、グレーのトレンチコート。ここで煙草を吸うんだけど、煙草を吸って噎せるところが何度見ても美しい。
・ウェイトレスや老人が指をパチンと鳴らし、喫茶店内で「お席、ご自由にどうぞ」と言うんだけど、篠崎がどの席に座ろうとしても「その席は永久欠番で」「その席は」「その席は......」って感じになって結局空いている席は一つしかない。永久欠番の席に関してはよくわからない長い説明がある。私の勝手な感想なんだけど、芸能界も空いている席を死守するみたいな、そういう感じだよなーと思いながら観ていた。芸能界に限らず人生もそんな感じだけど。なんかよくわからない理由で永久欠番になることとか。
・10年後のマックス。赤いスパンコールのドレスにサングラス。
・篠「マ、マックス......変わらない、な......」変わり果てたマックスの姿に狼狽える篠崎。
・マ「篠崎先生こそ、ちっとも変わりませんね」
 篠「ああ......俺はちっとも......変わらない......変われないんだ」
変わり果てたお互いに関してのやり取り。芝居がかった口調。
 マ「いい学校でしたよね、私、忘れません」
・一つだけ空いていた席に関して
マ「篠崎先生が埋めて。"自然に"埋めて」席を埋めることの意味についても何かいろいろ考えてしまうなあ。
・突然歌いだすマックス。
「あの晴れた日に出会った君をずっと忘れない だから私は君のこともう一度愛してしまう」
わかる。オタクの心理ってこんな感じだと思うんだよね。何度でも好きになる。

・セット回転、また元のSONのシーンに戻る。
篠崎がハンガーでマックスに叩かれるシーンがあるんだけど、結構ガチで叩かれていた。よい。
・ハンガーで叩いているときにハンガーが折れてしまう。真田に取り返しのつかないことになったと言われる。
「この後ずっとこのこと(ハンガーが折れたこと)を言いますからね」
ちなみに私の1回目の観劇時(19日18時公演)のときはわりと本当に取り返しがつかなくなっていた......笑
2回目以降はハンガーに注目してみたら、ちゃんと折れるように割れ目?みたいなのが入っていた。
・折れたハンガーを持って歩き回る長谷川
「しーね!しーね!そして生き返ろ!」
わりとここの「そして生き返ろ!」って台詞が重要な気がしたんだけど、20日18時公演ではマックスの間の取り方の関係で、そして生き返ろ!まで言えてなかったと思う。
・ハンガーを十字にして「ジーザス!ジーザス!」
・ハンガーで切腹「御免!」
・なんかこの辺りで真田が病気で寿命短いみたいなことを言っていたような......時系列曖昧。でもどこかで真田の寿命が短いということを伝えていた。

・セット回転。10年後。
SONの記念館ができており、夫婦が観光として記念館に来ている。
先ほど折れたハンガーには展示用のチェーンがくくりつけられ、「伝説の楽屋の備品」とか書いてあったかな、ここでハンガーが折れるのはアドリブじゃなかったとわかった。記念館には後ろに写真パネルと、真ん中にSON周辺の模型がある。模型はバスが走るようになっている。右のほうの写真パネルには長谷川のところに「この人を探しています」って書いてあったような。
・記念館の館員っぽいおじさんと篠崎。
・また曲が流れて、篠崎がトレンチコートのポケットに手を入れたから篠崎が歌うのかと思いきや歌うのはおじさん。

・セット回転。またSONのシーンに戻る。ここら辺記憶が曖昧だけど真田の寿命が短いみたいなことで看護師・点滴とか輸血するとかのあの器具・椅子に座った真田が舞台上に。真田の病状をマックスが聞くがなぜか自己紹介をする看護師。
「ズブの"新人"ですがよろしくお願いします。洋楽が好きなので話しかけてください。最近はユーミンを聴いています」
この自己紹介のところ色々突っ込みどころあって好きだった。ユーミンとかそこらへんはアドリブだから様々なアーティスト名が出ていた。
マ「自己紹介なんでどうでもいいんだよ!真田先生の病状を知りたいんだよ!」
真「まあまあ、続けてください」
・真田どんどん病状悪化
・真「血がどんどん流れていくよ~血とともに意味がどんどん流れていくよ~意味がどんどん流れて行って無意味になっていくよ~」
ここの台詞も好きだった。意味が流れて無意味になりゆくということ。
・看護師「輸血が必要です!」
・マックスの輸血を勧める長谷川
まあ輸血はマックスだよね......笑 マッドマックス怒りのデス・ロードでもマックス輸血袋扱いだったもんね。
・長「真田先生とお前はな、血が繋がってるんだよ!」
 マ「血が繋がっているってそれはもう人類とかの話だろ!?」
・輸血のためにこちらの書類に記入を
・看「現在飲んでいる薬はありますか?」
 マ「ないです!」
 看「OKです!輸血します!」
 マ「実はお腹の脂肪を取る漢方をときどき飲んでいます!」
 看「問題ないです!」
・マックスと真田にチューブ付けて直輸血 マッドマックスだ......笑
・チューブを腕に付けていたシュシュで留める看護師に対して
 篠「シュシュで留めるの!?」
・うまく輸血できるように応援する篠崎「よいしょー!」
・チューブが絡まり頑張ってほどく篠崎
・チューブほどき輸血できるが逆流
・逆流のち更に逆流
・看「更に逆流!危険な状態です!」
 マ「更に逆流ってなんだよ!元に戻っていいんじゃねえの!?」
・余命時間をカウントするシーン
ここら辺で結構看護師の人が医療用語と見せかけて色々全然関係ないことを言っているんだけど、なんかイメージとしてはエヴァ使徒が襲来してくるときのミサトさんの台詞みたいな。
・余命時間をカウントしているときに看護師がトライアスロンとか言って、真田はもう舞台の床の上で自転車漕いでるんだけど、ちょっと舞台弱虫ペダルファーストリザルトの100人抜きのカウントシーンを思い出した。

・マ「問題じゃなくて答えを教えてくれよ」
ここのマックスの台詞で何となく思ったんだけど、今回小山さんが篠崎を演じるにあたって熱血感の部分は松岡修造を参考にしているという話があって。別に松岡修造のパーソナリティが役そのままとかそういうことではなくて、ただ単に熱血っぽい部分だけを参考にしているんだろうけど。松岡修造が2015年に出した本に『解くだけで人生が変わる!修造ドリル』っていう本があって、私は別に読んでいないけどその本のことを思い出した。好意的な意味で思い出したわけではないのだけれど。ドリルって言ってもたぶん内容は自己啓発。問題じゃなくて答えを教えてくれよっていうマックスの台詞は重みを持って降ってくる台詞だと思う。
・まあなんやかんやあって最後の授業をしますみたいなことを言う真田。
・マックスは春になったら卒業してしまうから春になる前に授業
・TIMの「命」のギャグをやる真田(弱っているから全然やれない)
 私が勝手に感じたことなんだけど、TIMのゴルゴ松本が2015年に出した本に『あっ!命の授業』っていうのがあって、そこらへんのオマージュなのかと思った。特に内容とは関係なく時事ネタとして。TIMの命ギャグもやっているし。私それも読んでないけど。
・「命の授業を始めます」黒板に文字を書いていく真田
「さっき看護師の土井さんがした自己紹介を(とか言いながらJKーー自己紹介の略?--とかを黒板に書く)」
・最終的に黒板に書かれた文字
DMM.com
  JK 命 JK」
ここ超面白かった。だってDMM.comでJK命JKだよ!?完全に検索ワードじゃないですか。自担がこんな「DMM.com JK命JK」の文字を目にするところ、を目にできるなんてすばらしきこのせかい。マジックミラーとかDMM.comとかJK命JKとかもう最高。
・篠崎も授業をしろというシーンで
 篠「授業なんて......僕、本当は体育教師なんですっ!」
><←こういうインターネット黎明期の絵文字みたいな顔になってホイッスル取り出してホイッスル吹く篠崎。
・体育教師でもいいじゃないか、体育教師の経験を生かして授業をしろみたいな感じに
・篠「ある日体育の授業を集団ボイコットされたんだ。受験前で少しでも勉強の時間に充てたかったという気持ちはわかる。でもな、先生は少しでも勉強ばかりの学校生活を体育の時間くらいはイキイキとしたものにしたかったんだよ。あるとき俺は生徒に理由を聞いたんだ。そいつはこう言った、『寒いから』」
 マ「どうでもいいよ!」
・マ「なんで真田先生は死ななくちゃいけないんだよ、教えてくれよ篠崎」
ゾンビっぽい感じで篠崎に「教えてくれよ篠崎、教えてくれよ篠崎」と迫る長谷川ら。
・篠「それは......死なないとこういう......ボケとツッコミのわけがわからないやりとりが......延々に続くからじゃないですか」
それに対して「死がオチだっていうんですか!?」
真「真田の死の局面でSONの人間関係が撹拌されている!これまではただ相槌を打っていればよかっただけの若者たちが積極的に~」こういう感じの台詞。
・なんやかんやあり、ステージの一本の木の前で正座し目を閉じて黙り込む篠崎
・長谷川、真田
「(正座し黙り込む篠崎に対して)ギブですかね」
この「ギブですかね」みたいな台詞も終盤の伏線なのかな。
・最初はただの一本の木だったところにいつの間にか桜が咲いている。このことから季節は巡り春、マックスの卒業が近づいているということがわかる。満開の桜が篠崎の頭上にある。
・篠「真田先生は、」
 その問いに対して「生きてますよ。もうとっくに意識はないけど」
真田は目を閉じたままベンチに横たえられ、看護師の付き添いがある。
 真「お腹の脂肪を取る漢方をときどき飲んでいます」面白すぎるうわごと。
・時系列合ってないかもしれないけどここら辺でマックス乱入?
マ「全部ぶっ壊してやる!マックスみゆき!怒りのデス・ロードだ!」
マックスみゆきって言ってた気がするんだけどみゆきで合ってるのかな違ったらごめん......笑
もうね、怒りのデス・ロードとかそのまんまマッドマックスだからね。
ここから完全にマッドマックスのシーン。ウォーボーイズみたいなアンサンブルの役者さんたちが、紫の髪の毛だったり、ギター持ったりした人とか出てきて、マッドマックスみたいな音楽がガンガンに掛かって大暴れするシーン。いやマッドマックスよりは大分まろやかなんだけど(そりゃそうだ)衣装とか音楽とか小道具が凝ってて格好良かった。たぶんここら辺の衣装は最近のマッドマックスじゃなくてマッドマックス2あたりを参考にしているんだと思う。このシーン大好き。

ちなみにマッドマックスのギター持った人っていうのはこれ

マッドマックス ギター - Google 検索

衣装のイメージはこれ

マッドマックス2 - Google 検索

 

・で、マックスは壊そうとするんだけど、結局何も壊すことはできなかった。真田先生も死んでしまう。
マ「ぶっ殺してやる!」篠「殺されたら俺も死ぬな」

・ここら辺から山場の篠崎の長台詞のシーン。前半に真田が篠崎に言った「あなたは山場を作れる人」という台詞の意味がわかった。
以下篠崎の台詞を覚えているところだけ時系列無視で断片的に(たぶん台詞は正確ではない)雰囲気で読んで......。

「何も壊れちゃいない。最初からここには何もないんだ」
「人はみんな死ぬんだ。俺も、真田先生も、看護師の土井さんも人はみんな死ぬ。生まれたときから少しずつ老いていく」
「思いつきに思いつきを重ねたこの舞台」
「俺は真っ白になった、そう、生本番の真っ只中、真っ白になったんだ......」
真田が死んだ後→「どっちが北?どっちが右?真田の死を起点として、真田が最後に見つめていた方角を北とするとあっちが南、こっちが上、あっちが下、こっちが右、あっちが左」
「このベンチ!ただのベンチではなく真田先生が横たわっていた真田の揺り籠!そして今は真田の棺!」
「真田先生がもう戻ってこないという状態が確定されたことにより発生した虚無、悲哀、そして鼻をつく臭い--死臭!もうバスは来ないバス停の風情、それを包む全景」
「1枚の桜が頬をかすめる。それは、桜の花の遺言です」

・ここの台詞がとても美しくて、自担の口から虚無だとか悲哀だとか死臭だとか棺だとか、鬱くしく美しい言葉が聞けてよかった。私は満開の桜の木の下に佇む篠崎を初めて観たときに、ああこの景色をずっと待っていたと思った。このシーンでは桜の花びらが舞う演出がされていて、最後の3回目の観劇時には、舞った花びらが篠崎のつむじの辺りと前髪に2枚、残っていたままだった。その花びらは、最後の台詞を言って篠崎が顔を上げたときに、前髪の1枚は自然に落ちていった。もう1枚は残ったままだったんだけれど、このシーンが終わるときはハケずに演者が残ったまま、そのまま場面転換で、帽子やコートを身に着けるんだけど、帽子を被るときにつむじに残っていた1枚がきちんと自然に落ちて、ああこの人は天才なんだ、と感動してしまった。もちろんこの一連の動きは花びらが落ちるように計算された動きなのだとは思う。それでも本当に綺麗に花びらが落ちていって、ひたすらに美しかった。

 

・クライマックス
一旦ハケたりせずにそのまま移動。そのまま移動するから連続性を感じられるなあと思った。また最初に出てきたバスからキャスト全員出てくる。蒲田行進曲の大団円みたいな感じ。マッドマックスシーンのキャストも出てきて、篠崎は仲良さげにキャストの頭を掴んだりする。死んだはずの真田も出てくる。
篠「不自然だ!いや、自然だ!」
真「合格!SONへの赴任を認めます!」
中盤の「ギブですかね」の台詞がここの「合格!」に繋がっているのかなあと思った。

・黒板に篠崎が「SON」とバシっと書いて終わる。(確か......)


・カーテンコール
小山さん「シルバーウィークの皆さんの貴重な時間をこの舞台に充ててくださり、本当にありがとうございました」
私が観た3回ともこんなようなことを言っていて、いいなあと思った。たぶん私みたいに遠征してきた人とか、チケット取れなくて当日券に来た人とか、そういう人たちにはなかなか響く言葉だと思う。遠征大変だよね、お互い頑張ろうね......。3回目の個人的に最後の観劇時には、もう私は一生この舞台を観られないんだなとか、北海道と東京って遠いなとか、最低賃金でバイトしているからしんどいなとか笑、色々勝手に考えてちょっと涙ぐんでしまった。

 

 舞台の内容もとても私好みだったんだけど、舞台が終わって、特に夜公演のあとに暗い中ひとりで新大久保駅まで歩いていくことも好きだった。私は今回初めて新大久保に行ったんだけど、あのまち全体の混沌とした感じがこの舞台の内容と合っていて、舞台の余韻が掻き消されないなと思った。あとマッドマックスのくだりとか、ぜひ加藤シゲアキさんに観てもらいたいなあと思っていたのでちゃんとシゲアキさんが観に来てKちゃんNEWSで「マッドマックス!」って感想を言ってくれていてよかった。ラジオを聴きながらネタバレじゃん!って笑ったけども。マッドマックス観た人はわかると思うんだけど、この舞台に関しては「目が合った!」って口に出すのって割と残酷だよね。マッドマックスではウォー・ボーイであるニュークスが「俺を見ろ!」と言いながら敬愛するイモータン・ジョーのために相手に突撃する自殺的行為に走るんだけど、もう「目が合った」と「俺を見ろ」ってほぼ同等の行為だよね。マッドマックスに関してはジャニオタと絡めてブログを書いている人がいるから、興味があるかたはぜひそちらの記事を参考に。

 ずっと根暗でクソサブカルな青春を送っていた私が、2015年に小山さんのファンになって、NEWSのファンになって、初めてジャニーズを真剣に好きになって、小山さんの舞台を観ることができたのは本当に奇跡に近いことだと思った。このタイミングで好きになって、このタイミングに舞台があって、舞台の内容も私好みのもので、こんなに色々な偶然が重なるなんて素敵だなあと思った。

 本当はもっと書きたいことがあるんだけど、どうやらはてなブログには文字制限があるらしいから小山担目線の小山さんがかわいいって感想や日替わりネタについては別記事に分けます。

 最後に、満開の桜の木の下で美しい長台詞を言う場面で私がイメージした坂口安吾の文を引用して終わります。毎回坂口安吾の引用していてごめん......好きだから......。別に内容は舞台と直接関係あるわけじゃないんだけど、幻想的で美しい雰囲気は伝わったらいいなと。「始めて」とか原文ままです。私は岩波文庫からの引用だけど、青空文庫で全文読めるのでよかったらぜひ。

坂口安吾 桜の森の満開の下

 彼は始めて桜の森の満開の下に坐っていました。いつまでもそこに坐っていることができます。彼はもう帰るところがないのですから。

 桜の森の満開の下の秘密は誰にも今も分りません。あるいは「孤独」というものであったかも知れません。なぜなら、男はもはや孤独を怖れる必要がなかったのです。彼自らが孤独自体でありました。

 彼は始めて四方を見廻しました。頭上に花がありました。その下にひっそりと無限の虚空がみちていました。ひそひそと花が降ります。それだけのことです。外には何の秘密もないのでした。

(坂口安吾桜の森の満開の下・白痴 他十二篇』岩波書店 2008)  

  

 きっと私は、あの満開の桜の木の下の風景を、いつまでも忘れることができないだろう。