水際の鏡像

ライブや舞台のはなし

君は吉原の桜を見たか――NEWS LIVE TOUR 2016 "QUARTETTO"小山慶一郎さんソロ『愛のエレジー』感想

NEWS LIVE TOUR 2016 "QUARTETTO"が6月12日で終了。メンバー、スタッフ、このツアーに関わった人たちにありったけの愛をこめて感謝。

というわけで、コンサート全体の感想も書きたいところではありますが、取り急ぎ小山慶一郎さんソロ『愛のエレジー』の感想を。相変わらずド主観です。

 

 

私が今回参加したのは、真駒内セキスイハイムアイスアリーナ両日と東京ドーム両日の4公演。個人的に一番好きだったのは真駒内2日目の愛のエレジーかな。一番好きというか一番ちゃんと観ることが席だったという理由もある。

愛のエレジーに裏テーマとして某曲があることは知っているのだが、あえてそこには言及せずに純粋にコンサートの演出や衣装を観て感じたことを書こうと思う。

 

 

東京ドームの演出とは違い、小山さんはメインステージからの登場。メインステからセンステまでの花道には赤い提灯が付けてある。和服の小山さんと、提灯、和傘を持ったジュニアを引き連れている様子を見た瞬間に花魁だー!!!花魁道中だー!!!と完全に盛り上がった。私が。まだこのときは本当にモチーフが花魁かどうかはよくわかっていなかったけれど、勝手に花魁って思いこんでいた。
1日目はメインステ寄りのスタンドだったから、メインステからセンステまでジュニアを引き連れて歩いていく小山さんだけはきちんと見えたけど、センステで踊る様子は後ろから眺める感じ。

1日目と逆側のスタンド、かつセンステ寄りのスタンドだったから2日目はきちんと観られた。小山さんが花道を歩いてくる様子をじっと見ていたんだけど、あの……しゃなりしゃなり歩いていました。私の記憶が正しければ。厚底靴で花魁滑りの、あの歩き方で歩いていたと思う。多分。衣装は別に厚底の靴ではないです。私の脳が正確に情報を認識していれば。
魁道中がよくわからない、という人は映画『さくらん』の予告編の最後の方を観てもらえるとわかりやすいかも。
まだ公式サイトが残っていたので一応リンクを貼っておきます。

映画『さくらん』公式サイト

愛のエレジーの最後はセンステに仰向けで倒れ込んで胸を上下させる様子がモニターに映し出されて終わるんだけど、それを観て近くにいた人がぽつりと「けーちゃん死んじゃった……」って呟いたんだよね。その言葉を聞いて、ああ、あれは死なのかもしれない、としみじみ思った記憶。

もちろん受け止め方は人それぞれだから別に愛のエレジーの最後を「死」と限定しなくてもいいんだけど、私は、愛のエレジーの小山さんは死を選び取ったのかなあと思った。

 

遊女には、「心中立」というものがある。

心中立て(シンジュウダテ)とは - コトバンク

デジタル大辞泉によると「心中立」とは「男女がその愛情の契りを守りぬくこと。また、それを証拠だてること」とある。

Wikipediaの「心中」の項目が心中立の解説がわかりやすいので載せておく。

心中 - Wikipedia

心中立は実際に死ぬわけではなくて、「愛の変わらぬ証として、髪を切ったり、切指や爪を抜いたり、誓紙を交わす等、の行為」なんだけど、「やがて自らの命をも捧げる事が義理立ての最高の証と考えられたことから、現在の心中の意味になった」ともある。愛のエレジーの小山さんは代わりの行為ではなくて、本当に自らの死をもって愛の証明をしたのではないかなと。私の勝手な感想ですが。

また、Wikipediaの「心中」内の「情死」解説によると、

情死を美化する日本独自の来世思想(男女が情死すると、来世で結ばれる)から、遊廓を逃亡した遊女などが気に入った客と情死する

こともあったという。今世で結ばれないのなら、せめて来世でという切なる願いが愛のエレジーには込められているように感じた。

 

ここで「愛のエレジー」の「エレジー」の意味について考えてみよう。

エレジー(エレジー)とは - コトバンク

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説によると、

哀歌。語源はギリシア語 elegeiā (嘆き) 。死そのほか人生の悲劇的な諸相に関する瞑想に触発されて,整った韻律や用語で歌われる抒情詩。初め悲嘆として表現された情緒は,永遠的な原理の瞑想に慰めを見出して終る。

 

やはり、愛のエレジーを語るうえで「死」というモチーフは避けて通れないのではないだろうか。

愛のエレジー - 小山慶一郎(NEWS) - 歌詞 : 歌ネット

実際の歌詞にも「あなたを死ぬまで愛したい」「永遠 情熱が泣いてるよ」等とあるように、「死」と「永遠」が表現されている。

 

  • 東京ドーム1日目

途中で謎の考察のようなものを挟んでしまいましたが東京ドーム1日目の愛のエレジーの感想!1日目はバルコニー席。メインステから出てくると思いきやバクステからの登場。ドームは花道が長いから、バクステ→花道半分くらい使っての花魁道中(半分歩いて半分折り返す感じ)だった。

アリーナ規模のときと違って、5万人近い収容人数のドームで観る愛のエレジーはなんかもう……本当に小山さんの気高い美しさが溢れていたね……。

そこにいるのは「小山慶一郎」ではなく、「吉原の高級花魁」だった。幼少時代に吉原に連れてこられ、努力と苦労と汚辱に塗れた日々を乗り越え、吉原のトップまで昇りつめた一人の花魁の姿が私には見えました。私には。

 

  • 東京ドーム2日目(ツアーオーラス)

席はアリーナ前方(というか前方どころではない、今後の人生でもうこの位置で観ることはないかもしれない席)だったんだけど、バクステは遠い。でも今回のツアーで初めて小山さんを「見下ろす」席ではなく「見上げる」席だったのでよかった。見下ろすよりも見上げる方が、「位の高い人を観ている」ように感じられて、花魁道中の気分を味わえた。正面の映像は映像化されたらじっくり観ればいいやと思っていたので、モニターはあまり観ずにずっと小山さんの背中を観ていた。見上げた小山さんの背中はしなやかで大変美しかったです。

 

  • 番外編:愛のエレジーの秋山大河くんがすごい

小山担だとジュニアに詳しくなくても、いつの間にか名前と顔が一致しているであろう秋山大河くん。ドームでは秋山くんにも注目して観ていたんだけど、愛のエレジーの秋山くんの気迫が凄い。一番小山さんの傍で踊っていたような気がするし、途中の胸をはだけさせる振り付けも全力で、表情の気合もすごい。小山さんと仲が良いってことは知っていたのだけれど、そりゃこんなに全力で自分のソロを踊られたら仲良くなるだろうし、小山さんも秋山くんもお互いに嬉しいだろうなあと思う。

 

『NEWS LIVE TOUR 2016 "QUARTETTO"』の小山さんソロの『愛のエレジー』は、かつて吉原に狂い咲いた桜のような美しさがあった。いつか散りゆく儚い運命だと分かっていても、一瞬だけ咲き誇る満開の桜。美しさも、力強さも、儚さも、優しさも、すべてを兼ね備えた桜を、私は確かにこの目で観た。